ずいずい随筆
2010年05月17日
先日、初めて訪れたスーパーマーケットで買い物をしたのですが、お酒も何本かカゴに入れておいたところ、レジで精算する際に成人確認を要求されてしまいました。まさかこの歳になって年齢を確認されるとは思わず、えっ?としばらく固まってしまい、店員さんとじっと見つめ合うことになりました。 やがて店員さんが申し訳なさそうに、何か年齢を確認できるものを、と再度頼んできたので、戸惑いつつも財布から免許証を取り出して提示しました。無事に成人確認が終わったところで、もう三十二歳なんですけどね、と苦笑しながら言うと、店員さんは、済みません、と謝った後、とてもお若く見えたもので、と付け足しました。若いと褒められて気分が良くなるのは女性だけかと思っていましたが、実際に自分がそう言われてみると決して悪い気はしません。ついニンマリと笑って、別にいいんですよ、と答えました。それから数日後、再びそのスーパーでお酒を買うことになったのですが、このときは無精髭が伸びている上に寝癖を隠すためにキャップを被っているという、少々薄汚い姿だったので、今度はさすがに成人確認はされないだろう、と思っていました。ところが、やはり店員さんはじっと僕の顔を見て、年齢を確認できるものを要求してくるではありませんか。実を言えば内心では少し期待していたので、僕はまたニヤニヤと笑いながら免許証を提示しました。そうか、そんなに若く見えるのか、と妙に浮かれた気分になってしまいます。 しかし、そんな頭の中にお花畑が広がったような状態は長くは続きませんでした。翌日、また同じスーパーに買い物に行き、レジに向かったのですが、僕の前には三十代半ばに見える男性が並んでいました。にもかかわらず、何とその男性も店員さんに成人確認を要求されたのです。えっ、この人はどう考えても未成年に見えないでしょ、と意外に思いながら見守っていると、店員さんは決定的な一言を口にしました。済みません、とてもお若く見えたもので、という例の殺し文句です。そこで僕はようやく真実を悟りました。そう、つまり、このスーパーはアルコールを扱う際の年齢確認が異常に厳しいだけで、決して僕が特別若く見えたというわけではないのです。がっくりと気落ちする僕の前では、年齢確認を終えた男性が、やはりにんまりと照れ臭そうな笑みを浮かべていました。今回の件で学んだのは、男だってお世辞には弱いから、うかうか甘言に乗せられないよう注意しなければならない、という教訓です。
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